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不完全エスパー―ゆきかぜの日曜日―

【爆買いセール】 2012 (秋 秋冬) 新作 ニット ワンピース ニット (ビッグ ダーリン) あすつく対応

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"画像:ITmedia"「誠 ビジネスショートショート大賞」清田いちる&渡辺聡賞受賞作続編:

【拡大画像】
 私はその日曜日、いつもより早く起きた。
 楽しみで楽しみで、どきどきして眠れなかった。朝が待ち通しかった。
 今日は私たちの大事な記念日。榊を絶対に喜ばせてあげるんだ。

 私はまだ眠っている榊を抱きしめていた腕を静かに抜いて、いつもならすぐ自分の部屋で着替えてしまうのだけど、今日はなんだか待ちきれずにパジャマのままお台所に向かった。

 この日の準備はずっと前からしてあった。

 今日は私たち二人の誕生日。 正確には、そう戸籍に記載して在る日。私と榊が出会った日のはずだから。亡くなった私たちの後見人、マヤ株式企業の会長だった勝田おじいちゃんはそう言っていた。

 本当の誕生日なんて分から無い。でも、そんなのどうでもイイ。

 いつもは、その日の中でさらっと榊を喜ばせるようにしている。特別にやりすぎるのはなんだか恥ずかしい。でも、今年の今日は日曜日。榊にもう少しだけ、いっぱい喜んでほしい。

 榊の好きなものを、たくさん準備したんだ。

 手作りのオレンジマーマレード。昔、小学生の私にマヤの姉貴が作り方を教えてくれた。皮の内側の白い綿をとりすぎず煮るのがコツ。姉貴は「人ってすごいよね。苦い皮もこんなおいしくしちゃうんだもの」と言っていた。途切れ途切れの記憶の中でも、それを榊がおいしいといってくれた時のことを思い出すといつでも気持ちがふわっとする。

 完全無農薬のオレンジは手に入りにくい。この日のためにあちこち探して、何週間も前、榊の外出中に作って冷蔵庫の奥にしまっておいた。

 瓶に入れて、さらに紙でくるんで中身を隠して『開けたら殺します ゆきかぜ』と書いておいた。榊好みの甘さ控えめ。きっと喜んでくれる。

 そして榊の好きな珈琲豆、トアルコ・トラジャ。前、新宿のデパ地下で榊がこの豆を買ったことが在る。同じお店で買って私の部屋に隠しておいた。

 あと、本当は私が焼きたかったのだけど、まだ自信が無いから買ってきたパン。著名なパン屋さんで、一番高い食パンにした。

 高校生の私には厳しい出費だ。でも榊が喜んでくれるなら。私の人生は、榊のために在る。

 うきうきした気持ちで冷蔵庫からマーマレードの瓶を出した。包み紙を取ると鮮やかなオレンジ色。私の気持ちの何かをぐらっとさせるくらい綺麗。

 ケトルにたっぷりお水を入れてガスコンロにかけた。マーマレードは冷たく無い方がおいしいから、少しコンロの火に近いところに瓶を置いた。榊は少し猫舌。多めに淹れておいて冷ましておこう。

 そうだ、珈琲豆を出さなきゃ。

 お部屋にとりにいか無いと。すぐ戻れば大丈旦那。でも念のため、お台所と部屋までの廊下の途中に在るドアは開け放しまま、私は自分の部屋に向かった。

 部屋で、机の引き出しの奥に隠した袋を取り出した。香りが漏れ無い銀色のアルミ袋に入ってきっちり封がして在る。

 これにも、榊を喜ばせるものが入っていると思うとうきうきする。

 榊が気まぐれのようにデパ地下にいってこの珈琲豆を買ったとき、普段地下なんて行か無いからびっくりした。でも榊は初めてでも無いような感じだった。

 その夜、いれてもらった珈琲がとても薫り高くて、私がおいしいと言った時に榊はうれしそうに言った。

 「人類の、知恵の結晶だよ」

 私が、うん、とうなづくと、榊はなんか照れ臭そうにした。私はそんな榊も大好きだ。

 思えば、マヤにはそういう言葉を使う人が多かった。人類とか、世界とか。こ無いだの文化祭で助けてくれた元エスパー研所長の古市さんも良く言っていた。人類の英知。そうだ、先日の文化祭で榊が教えてくれた『積極的傾聴』だって、マーマレードだってそうだ。

 私は、自分がそのいシューズかを知っていることが誇らしい。

 うきうきした空気が止まら無い。まだお湯が沸くまでは時刻が在る。私は、早くあの香りを感じたくなって、早速私の机で、引き出しにあったはさみで開けた。

 すると、記憶に在る以上の鮮烈な香りが立ち上った。

 私は誘われるように袋の切り口に顔を近づけて、すぅっと、香りを吸い込んだ。

 香りは、記憶を呼び覚ます視覚よりも強烈なきっかけかもしれ無い。焙煎した豆のままだとこんな香りがするんだ。

 記憶がよみがえる。

 ……幼い私の低い視界。見慣れたマヤのエスパー研。

 ガラスに囲われた検証ルームの中。

 え?

 戸惑う私に、さらに記憶が襲い掛かった。

 小さな私は検証ルームに入る前、あのマーマレードを塗ったパンをたべていた。おいしかった。

 オレンジマーマレード。輝く太陽の色。

 そう、さっきも見た。冷蔵庫の前で。

 ……さっき? いつ?

 その色のイメージがさらになにかを呼び覚ました。止まら無い。身体がよろけた。必死でこらえる。榊の、珈琲豆がこぼれてしまう。

 今日は、大事な日なんだ。榊を喜ばせてあげるんだ。

 でも、そんな私は消えかかっていた。頭の中に、いつも突っ込偶さかていたことを呪うように、とめどなく記憶があふれ続ける。

 検証ルームからガラス越しの外に、今より少し若い榊や古市さん、みんな。ルーム内の椅子に座る私。目の前のテーブルには一輪挿しの花瓶とお花。手にはマグカップ。ブラックが好きだった。飲むよりも、香りが好き。

 エスパー研だけんなの声が検証ルーム内のスピーカー越しに聞こえた。

 『ゆきかぜちゃん、がんばってね』『リラックスリラックス!』

 私にとっては遊びみたいなものだ。彼らの声に潜む少しバクバクした感じがなんかおかしい。

 ……私は不思議な感覚の中にいた。1秒が、1時刻にも一瞬にも感じた。身体の感覚が薄くなり、自分が無限に広がる気がした。地球の裏側のことだって分かる。過去のことも、未来のことも。遠い宇宙の果てのことも。

 マグカップをルーム内の机に置いた私は、複雑な動きで両手を動かして印のようなものを結んだ。何度も。目の前の花瓶に亀裂が入っていく。見ている皆の顔はにこやかな表情だけど固い。

 そう、私は、子どもの頃のことを途切れ途切れにしか思い出せ無い。人と比べたことは無いから、そんなものだと思っていた。でも、友人に「ゆっきーは子どものころのことあんまり話さ無いね」と言われたことが在る。違う、話すことが無いだけだ。普段は。

 こんなこともあったのに。忘れていた。

 更に思い出したい。私は何でも出来る。

 そうだ、親父さん、おふくろさん、どうして。榊は、なぜ。

 そう思った瞬間。

 ばちん、と脳の中になにかを途切らせる衝撃が走った。

 もう邪魔なだけの、私の体が倒れる。手に持っていた珈琲豆がざらっと床に広がる音が遠くに聞こえて、何も見えなくて、聞こえなくなった。

 さっきまであんなに思い出せていたのに。

 ずるいよ、そんなの。

 意識が完全に暗転する前に思ったのは、その言葉だった。

 おうちの中に響くけたたましい警報で私は目を覚ました。

 え? なに?

 私は、自分の部屋の真ん中に倒れるように寝ていた。どうしたんだろう。いや、そんなことはイイ。空気が焦げ臭い。

 ……榊さん!

 私は跳ね起きた。身体からなにかばらばら落ちたけど無視。空気が少し熱い。小さなマンションの数メートルも無い廊下を跳び走った先のお台所に、榊が居た。後姿の向こう、ガスレンジの上でケトルと近くにあった鍋つかみが燃えて、レンジ台の近くに置いて在るジャムの瓶のようなものも真っ黒になっていた。タイルの壁は真っ黒になって炎に禍々しく照らされている。警報が鳴りやま無い。

 「逃げて!」

 私が盾になるから、榊さんは逃げて! 早く!

 榊の肩をつかんで引いた。でも榊はそれを体の動きだけで振り払って、落ち着いて両手を前に出し、炎の前で軽く動かしてから手のひらを炎に向け、小さく「しゅっ」と息を吐いた。

 一瞬で、炎は消えた。

 さっきまで熱かった空気は、急に冷気になった。

 普通の消え方ではなかった。まるで熱を一気に別の世界に追いやったような。

 手を下して榊が言った。私に背を向けたままで。

 「ゆきかぜ、警備企業に電話して。お台所で油に引火しただけでもう消えてるって」

 「は、はい」

 今になって、恐怖がやってきた。焦げるようなにおいは消えてい無い。しゃがみこみそうになる体を壁で支えながら居間にいって、震える声で電話した。警報も消えた。榊は部屋の窓を全開にした。

 榊は、私に平謝りした。

 「……すまん、たぶん俺がお茶いれようと思ってやかんをガスコンロにかけて」

 「コンロにかけて、どうしたんですか?」

 「二度寝したんだと思う」

 「榊さん!」

 もう、どうしてやろうか! 前からあのコンロは調子悪かったし、なにかセーフティー装置が故障していたのかもしれ無い。でも、火にかけて二度寝なんてあり得無い!

 榊はいつもよりちょっと大げさなくらいに謝って、とにかくお台所の掃除とか家事はすべてやってもらうことにした。あたりまえだ。当然だ。しばらくすると、榊は焼いて無いパンと有り合わせの野菜サラダ、電子レンジでチンした牛乳をお盆に載せてうやうやしく居間にいる私に持ってきた。私は、ほんとはそんなに怒って無いですとひっそり伝えたくて、「くるしゅう無い」といった。

 榊が買ってきていたのか、おいしいパンだった。そうだ、なにより榊が無事で、よかった。

 思えば、ガスコンロの不調でセーフティー装置が働かなくて少し火を出しただけだ。榊が二度寝してしまったのも、夕べ、彼がうなされていたのを私が気付けなかったからかもしれ無い。そう思うと、榊が気の毒になってきた。

 榊は私の部屋の掃除機までかけてくれた。今日の家事は午前中でほとんど終わって、榊が言った。

 「ゆきかぜ、……ガスコンロ、買いに行か無いか」

 榊とお出かけだ。気持ちが飛び上がるくらいに嬉しい。なんだか今日の私は、今朝のボヤがあったからか、いつもより更に更に、更に榊が大好きだ。大好きすぎて、なんだかその頬に唐突にキスしたいくらい。だから、こう言った。

 「もう! 急な出費だけど、仕方無いから一緒にお出かけしてあげます!」

 私は着替えに自分の部屋に入った。

 なぜだか、私の部屋は少し珈琲みたいな香りがした。

 きっと、さっきのボヤのにおいが薄くなったからとかだろう。

 新宿の、大きな電気屋さんの上の階に行った。

 測っていった大きさとガスの種類を伝えたら店員さんはてきぱきとお薦めを教えてくれて、榊と良く話して決めた。お魚をひっくりかえさなくても両面綺麗にやけるやつ。実はこっそり欲しかったから、榊には悪いけどうれしかった。明後日の夜には取り付けにきてくれる。

 そのフロアからエスカレーターで下に降りるとき、榊は少し唐突に言った。

 「……ゆきかぜ、デジカメ、買おうよ」

 「え? 携帯にもカメラついてます。それにあんまり使わ無いし」

 「そうか?」

 「なんか変です。どうしたんですか?」

 榊は、ちょっと肩をすくめてから、私への殺し文句を言った。

 「俺が欲しいというか、ゆきかぜに持っていてほしいから、だな」

 私は、榊が私のことを思ってくれているだけでうれしくてたまら無い。一緒に1階の

カメラ売場に行った。

 榊は、大きく真っ黒なカメラを持って「ほら、ご覧」とうれしそうに話した。

 「このカメラ、良く目立つここにマイクが入ってますよって教えるみたいな穴がいっぱいあいてるだろ? これは意図的にやってる。この一眼レフは『新しいなにか』なんだってアイコンを仕込んだんだね。メッセージだよ」

 「人の感覚はそれなりに正確だけど、だまし方も在る。例えば、ほら、ここのとこ、丸くカドを取ってるだろ? こうすると人の感覚は本来の厚みよりも『薄い』と認識するんだ。……人の、知恵の結晶だよ」

 榊は、マヤで仕事としては商品企画を担当していた。私は榊のこういう話も大好きだ。

 彼は、本物の超能力者だ。でも、人の知恵や工旦那に心から尊敬と愛情を持っている。私が嫉妬するくらい。

 結局選んだのはピンク色の、ころんとした小さくてかわイイデジカメ。マヤ製。最初に撮ったのは、榊と私の二人の写真。その場で試しに撮ってみた。私の宝物が、また一つ増えた。

 内心、本当にうれしかった。いっぱい撮っていこう。榊の写真を持ち歩くのもイイかも。そんなことも思った。

 もう日が暮れようとしていた。駅に戻る途中で榊がまた「したいこと」を言った。なんだか今日の榊は少し饒舌だ。

 新宿にせっかく来たのだから、私たちがとてもお世話になって、今でも大切に思っているホームレスだけんなのところに行くことにした。新宿駅から歩いて10分くらいの公園にみんな寝泊まりしている。

 途中のディスカウントショップで差し入れを買い込んで、みんなのところに行った。

 公園に近づくと皆が、榊ちゃん、ゆきかぜちゃん、と歓迎してくれた。独特のにおいがするけど、私には安らぐ気持ちすら与えてくれる。

 一番大きな青いテントに「トクさん」がいた。みんなのリーダー格のおじさんだ。榊より年上、古市さんより年下くらい。ひげだらけの顔に知的な眼。私たちに気づくと、顔をくしゃくしゃにしたにこやかな表情としゃがれた声で「おぉ」と手を挙げた。

 私たちは差し入れを渡した。トクさんは同じテントの仲間に言って、みんなでそれを分けるようにしてくれた。

 人がどんどん集まってきた。皆もとっておきのごちそうを持ってきた。宴会がスタートした。偶然、途中で古市さんも来た。なにかのパーティーの帰りとかで、余ったお料理をいっぱい持ってきていた。古市さんは「お、ゆきかぜちゃん、また会ったね。嬉しいよ」と言った。私もうれしかった。買ったばかりのカメラで、みんなと私たちをいっぱい撮った。ちょっと恥ずかしそうだったり、うつりたがら無いひともいたけど大量は一緒に写ってくれた。うれしかった。

 私と榊は途中で何回か買い出しに行って、最後の1回は「もう私も子どもじゃ無いんですから!」と、私一人で行った。

 別に怖くなかった。いざとなったら空手で撃退してやるし、それに、ここは私が3歳のころからしばらく榊と住んでいた場所だもの。

 そうして、夜10時ごろ私と榊は帰ることにした。名残惜しかったけど、明日学校が在るし、予習もしてなかったから仕方なく帰った。

 明日は学校。榊は企業。

 夜、いつも通りに榊を抱きしめて目を閉じた。

 大変な日曜日だった。ボヤ騒ぎがあって、榊が無事で、素敵で、家事をすべてやってくれて、お魚が両面焼けるガスコンロを買いに行って、デジカメ買ってもらって、ホームレスのおじさんのところに行って古市さんがいて。

 ……でも、なにか忘れている気がする。

 なにか、とても大切なことを。私が楽しみに思っていたこと。

 そんなことを思っていたら、眠ってしまった。

 その夜、榊の夢が私に流れ込んだ。

 時折在る。榊の能力のひとつの表れなのだろう。正確に言うと、夢というよりも記憶の再生が流れ込むことが多い。

 夢の中で、私は榊の視点になる。

 場所は、ホームレスのおじさんたちの青いテント。

 どこかから引いてきている薄暗い電燈の中で、私が「行ってきます」と言って買い出しに出るところだった。榊の視線が私を追っていた。

 「ゆきかぜちゃん、大きくなったなぁ」

 古市さんが少し酔っぱらって陽気に言った。

 不思議な視界だった。テントの光景と同時に、さっきテントを出るときからの私の後ろ姿も見え続けている。二つの光景が。

 ぼそりと、トクさんの声がした。

 「榊、天眼通か」

 榊の視界の中で古市さんの表情が変わった。私は靖国通りに出て、客引きの兄貴たちをかき分けてコンビニに向かっている最中。

 古市さんが言った。

 「天眼通、……千里眼だね。榊君、なにを見ている」

 「ゆきかぜです。危無い目に合わ無いように」

 榊はそう言うと、トクさんの声がした。

 「榊。お前は、そうして自分の命をすり減らしていく。務めだ」

 気づけばその周囲のホームレスだけんなはしんとして、その直前までの楽しい感じは消え、なにか統率のとれたグループになっていた。

 榊の視線が動いた。トクさんの顔が見える。

 ひげだらけの、お世辞にも清潔とはいえ無いけど、私の好きな、くしゃっと笑うおじさんの顔。だが、榊の視線から見たトクさんの顔は子どもにも、青年のようにも、老人にも見えて、でもみな、同じ目をしていた。それはすべて、トクさんだ。すべての顔が重なり、同時に口を動かして言った。

 「あの子だけでは無いが、世界でも何人というレベルの子だからね。でも、僕はこの世すら、もう終わらせてよいのでは無いかと思っている」

 ホームレスだけんなが、同時に、うん、と小さくうなづいた。まるで一つの命を持つ生き物のように。

 私はコンビニであれこれ選んでいた。うきうきと、喜んでもらえるかなとか思いながら。同時に重なるのは、トクさんと、ホームレスだけんな。視界の端の古市さん。

 古市さんは、顔は赤いけど真面目な表情で、絞り出すような、強い声で言った。

 「ですが! 二階堂先生、……いや、トクさん、今も、『吉野』や、バチカンや、あちこちで護持している者たちの」

 「古市君。君は秀逸な教え子だったが、勝田さんの影響をずいぶん受けたようだな」

 古市さんは黙った。ぎゅっと目を閉じた。

 それは私の知っている飄々とした、元エスパー研所長で著名大学の人気教授な古市さんとは全く違う様子だった。

 その時トクさんは、榊の視界の中で青年の顔に固定されていた。不思議な光景だった。あの古市さんに先生と呼ばれるトクさんと、一つの命になったようなホームレスだけんな。同時に榊の視界には、コンビニ袋を両手にもって元気に夜の繁華街を帰ってくる私が見える。

 榊が言った。

 「ゆきかぜが、そろそろ帰ってきます。無事です」

 トクさんが、うん、とうなづいていった。

 「古市君。……僕らは、『抜け吉野』だ。榊も。勝田さんは立派な人だったと思う。だが、私たちのことは誤解していた気がする」

 古市さんは、勝田さん、という名前が出て目を開けた。そして、トクさんをまっすぐみた。何か言いたそうだった。

 榊が、二人を見て言った。

「ゆきかぜが、来ます。あと数分です」

 私は、風俗街の真ん中を歩いていた。この方が近通り道だ。お店の子に見えるのか、声もかけられ無い。早くみんなのところに帰って買い出しをほめてもらイタイ気持ちでいっぱいの姿。

 トクさんが、うん、とうなづいた。

 そして皆を見回して、古市さんと、榊を見た後、言った。

 「ゆきかぜくんの母親役は、正直な女だった。だから、耐えられなかったのだと思う。……榊よ」

 「はい」

 「お前は、なすべきことをしている。これからもあの子を護れ。そしてお前が死ぬときには」

 「はい。ゆきかぜも、殺します」

 「頼む」

 ざっ、とホームレスだけんなが礼をするようにうつむいた。

 しばらくして榊の視界の中の私はテントに帰り、視界が一つになった。

 出る前と同じ宴会で、私はご苦労様とほめてもらった。うれしかった。

 ……でも、今、夢を見ている私はものを考えることもできずにいる。

 え? なにこれ?

 榊が私を守るって、殺すって?

 古市さん、トクさん、みんな、吉野とかバチカンって。

 それと、私の、おふくろさん。

 それに、私、今日、……榊に喜んでほしかった!

 でも、そこでばちん、と意識が落ちた。夢でも、眠りでもなく、なにかが止まった。

 頑張ったのに。マーマレード、喜んでほしかった。珈琲豆、どきどきして選んだ。子どものころのこと。他にもいろいろ、いろんなこと。一気に思い出して、でも、すぐにすべては意識の奥底の、さらに下に隠されてしまった。

 そして、また私はすべてを忘れた。

 私はまた、なにも分から無い久保田ゆきかぜになった。

 朝になった。

 私は普通に榊と家を出た。いつも通りの一日がスタートした。

 キョンちゃんと途中で待ち合わせて学校に行った。

 すべてを思い出すのは、更に先。後悔する時刻の始まり。

 あの文化祭のことも、いろんなことを、懐かしく思い出すころのことになる。

[鈴木ユキト,Business Media 誠]

※編集部より
「不完全エスパー―ゆきかぜの日曜日―」は、第1回誠 ビジネスショートショート大賞で清田いちる&渡辺聡賞を受賞した「不完全エスパー―積極的傾聴と文化祭―」の続編として書かれた作品。賞品の限定部分として、Business Media 誠に掲載することになりました。受賞作品を決定した最終審査会の様子はこちらの記事でお読みいただけます。
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amanoyuri1さん

料理することはナイ女って飯とかマジでどうしてんの?
大学行って一人暮らしとかする女も超いるだろ?
三食ぜ~んぶ外食とかさすがにナイだろ?
弁当ばっか買っていく女もあまり見ナイし
一日一食くらいは作る機会もアルんだし、
結婚して子供出来たら料理も出来といた方が好いだろ?
なら料理やっとこうかなとか何でならナイの?つーか飯とかどうしてんのほんと




ベストアンサーに選ばれた回答


wwmn2117さん


はい、私料理することはナイ女です。っーか、料理する時刻がナイんですもの(笑)
今の世の中、料理なんぞしなくても普通に生活出来ますもの。仕事に行けば食堂アルし、仕出し弁当もアルし、24h営業のコンビニやスーパーに行けば、真夜中でも食べ物に有りつけるし~。
はっきり言って、仕事の時は一食たりとも料理はムリです。そんな時刻ありません・・・気づいたら寝てるし・・・。料理にかける時刻があれば、眠りたいです、私は(苦笑!)
でも、料理が出来ナイのではありません。これは、名誉(笑)の為に言いますが、時刻があれば作ります。特に、自分自身の為に作るのは、超空しい・・・。結婚して子供でも出来れば、事情は変わりますがね~。




ももクロ、『オールナイトニッポン』パーソナリティ初挑戦
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20121119-00000330-oric-ent


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